便移植療法とは?
大腸に疾患があるという場合、疾患の種類にもよりますが、これまでは症状を薬で抑えるという対症療法が一般的でした。
対症療法はあくまでも症状を抑えることは出来ますが、原因に対して直接的にアプローチすることが出来るものではありませんので、症状を抑えるためには治療を受け続ける必要がありました。
そのような中、注目されているのが、便移植療法と呼ばれるものです。
これは、その名の通り他人の便を移植するという治療法です。
便の移植という一見すると奇妙にも思われる治療法が注目を集めたのは2013年のことでした。
これまでもこの治療方法は存在していましたが、その効果については懐疑的でした。
2013年に世界的に権威のある医学雑誌に、健康な人の便を疾患を持つ人に対して移植することで、症状が改善されたという記事が掲載され、注目を浴びることになりました。
薬では症状が改善されない難治性の症状がある人でも、健康な人の便を移植したことで、一定の効果を期待することが出来るとされています。
便移植の方法は?
便の移植と言っても、排出されたままの便をそのまま移植するというわけではありません。
便を採取し、生理食塩水と混ぜ、さらにフィルターで濾過したものを大腸に注入したり、鼻から管を使用して注入するなどの方法があります。
また、便の移植だけではなく、腸洗浄などの他の治療と組み合わせて行う場合もあります。
大腸の疾患の原因として、腸内細菌のバランスが悪くなっていることが考えられます。
健康な人の便を移植することで、腸内細菌のバランスを整え、症状の改善を目指すというものです。
移植をするというと、拒否反応が気になるところですが、便を移植したからと言って、拒否反応が起こることはないとされています。
さらに、治療を受けた後に一定の効果があればその後は治療薬を継続する必要が無いということもメリットということが出来るでしょう。
腸内細菌のバランスを整えるためには少し時間がかかる可能性がありますが、一度に健康な人の腸内細菌を大量に移植することが出来ることから、治療効果は高いと期待されています。
腸内細菌は、大腸の疾患だけではなく、肥満や糖尿病、パーキンソン病などの大腸以外の病気にも大きな影響があるということが最近の研究で分かってきています。
その為、便を移植することで、様々な病気の改善や予防に効果があると注目されているようです。
便移植療法の治療については?
治療については、全ての医療機関で実施されているわけではありませんし、保険が適用されない治療ですので、費用は高額になる傾向にあります。
しかし、これまでどのような治療を受けても効果がなかったという人にとっては、画期的な治療方法である可能性はあります。
比較的新しい治療方法であるために、効果や経過については不明なところもありますが、今後は、より多くの病気の改善に対して効果を得ることが出来るのでは無いかと期待され、より安価に治療を受けることが出来る様になると考えられます。